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MBAについて

mba私(福永)は、弁護士として法律事務を行うほか、MBA(経営学修士)の経験を生かして経営コンサルティング業務も行っています。そこで、そもそもMBA って何?と疑問を持っていらっしゃる方のために、簡単な説明を。MBA は日本では経営学修士と呼ばれ、大学院で取れる学位の一つです。理論だけではない実践的・実用的なコースであることが特徴で、海外での多くの国では、キャリアアップの際に重視されます。日本で大企業に就職するためには大学を出ているのが当然と考えられると同様に、MBA はビジネスでの成功には必要であると考えられているのです。一口にMBA と言っても、大学によって様々な特徴を持っており、ここで一括りにして説明する必要もありませんので、ここでは私が経験したRMIT 大学のMBA でどのような勉強をしたのかをいくつかの分野に分けて説明します。

 

マーケティング

marketフィリップ・コトラー(マーケティングの世界では知らない人はいない世界的権威)のマーケティング論を基本にして、マーケティングプランを練るなどの訓練をしました。グループで行ったマーケティングプランの作成では、オーストラリアに実際にある企業を素材に、その企業がもし立ち上げるとしたらどんな新規事業を創出し、どんなマーケティングプランを立てるべきかという課題を課されました。私たちのグループが選んだのは、現地で有名なIT企業の一つ。練り上げたマーケティングプランは、現在、メルボルンのグループメンバーが実践しており、ここで詳述できないのが残念。

 

 

イノベーション論

thinkイノベーションをおこす企業とはどんな企業なのか、どのような仕組みを作ればいいのか。革新的アイデアを生み出す企業になるには、どのような条件が整わなければならないかという点も重要だが、とても興味深かったのは、「変革」の勉強。大企業に限らず、中小企業も何かしら「変革」をしていかなければ、今の時代は生き残って行けない。しかし、そこに2つの壁が。一つ目は、経営のトップに立つ者が新しいことにチャレンジしていかなければと思いつつ、なかなか実行に移せないこと。そしてもう一つの壁は、トップが新しいことにチャレンジしようとすると、周りの色んな人から多かれ少なかれ抵抗されること。そういうときに、経営者としてどのように考え、どのように周辺を巻き込んでいけば良いのか。キーワードは、教育と意思疎通、参加と巻き込み、簡便化と支援などなど。

 

デザインシンキング


dezainn2デザインシンキング(デザイン思考)という言葉は聞いたことがあるという人もけっこういるのではないでしょうか。それがどんなものであるかは、インターネットを少し検索してみれば色々な記事が出てくると思います。簡単に言えば、徹底的にエンドユーザー目線に立って、解決困難と思われる問題に道筋を付けていく手法とでも言えるでしょう。デザインシンキングと言えば、IDEOというアメリカのデザインコンサルタントファームや、同じくアメリカのスタンフォード大学が有名です。

 

実際にこの手法を駆使して、バンク・オブ・アメリカのキープ・ザ・チェンジという知らず知らずにお金が貯まっていく普通預金が考案されたりもしました。私も、グループ課題の中で、オーストラリアで問題になっているDV被害者救済のための仕組み作りを検討しました。被害者になったつもりでメルボルンの街中を歩き回ったり、関連する公的機関、団体、弁護士や医者などから聞き取り調査をした結果、考え出した仕組みは、金融機関を巻き込んだATMを活用したスキームでした。

 

企業戦略論
tac企業が戦略を練っていくには、どのように考えていけば良いのか。例えば、企業が何か成功したいと思うとき、「利益をあげられるマーケットは何だろう」という市場追求型の発想(外向きの発想)と、「利益を上げられる自分の強みは何だろう」という強み発展型の発想(内向きの発想)があります。これらの発想はいずれか一方のみで考えるというのは極端で、バランスをとるのが良いのですが、世間では意外と市場追求型の発想をする人が多いように見えます。カレー屋が儲かると聞けばカレー屋を出し、コインランドリービジネスが熱いと聞けばコインランドリーを構えてみると言う具合。他方、いくらわら草履を日本一上手く作れる技術(強み)があったとしても、わら草履で儲かる市場がなければそのビジネスは成功しません。MBA では、「こう考えるのが正解です」と教えてもらうのではなく、それぞれの生徒が、生徒同士あるいは講師とのディスカッションを通じて、何を「正解」と考えるか、なぜそう考えるか徹底的に考えさせられました。

 

リーダーシップ論

bis人を率いて行くと言うことはどういうことか。どのようにすれば従業員にやる気を出してもらい、創造的な発想で会社に貢献してもらえるか。リーダーになるためのマニュアルは存在しません。どんなに手練手管を労してみても、結局人は、真に魅力ある人にしか付いていかないのです。ただし、その魅力も人によって様々。人は誰しも魅力を持っているはずだけど、それに気付いていないし、それを伸ばす努力もしていない。そこで、まず自分自身を知ることが重要。自分が生まれてからこれまでの人生を振り返り、何を経験し、何を信じ、何に対して貢献したいと思っているのか。自分が普段意識しない内部にまで深く入り込んで考察し、自分ができるリーダーシップとは何かを考えさせられました。

 

企業会計・ファイナンス

会計マクロ経済、ミクロ経済のおさらいに始まり、企業会計、タイムバリューの計算を前提とした株式や社債の価値、資本コストや負債コストの計算、プロジェクトの評価とそれに基づく投資の意思決定などを学びました。

 

 

 

 

企業価値評価

star主に企業の財務諸表から、その企業の将来の業績を予測し、現在の企業価値を算定していく分野です。その会社の破産確率を算定する方法であるとか、、不正経理をしている確率を求める方法なども同時に学びました。オーストラリアで映画の製作・配給や、テーマパークの運営等を行っているビレッジ・ロードショーという会社の評価をし、2014年6月末当時の事情を基に、「売り」という判断をしたのですが、果たしてその後株価は下がりました。しかし、2015年に入って盛り返しているようで、私の評価も半年ほどの効力しかなかったようです。

 

 

 

オーストラリア商法・契約法・会社法

オーストラリア弁護士とはいえオーストラリアの法律知識はほとんどなかった私。しかも、イギリス法を基礎とするので、日本法とは根本的な考えが違う部分も沢山。実用的な話で言うと、オーストラリアで事業を興すには個人がいいのか、会社形態が良いのか。会社の役員になることでどれほどの責任を負うことになるのか、どのような行為に注意しなければならないのか。一つ言えることは、日本の経営者に比べて、悪いことをしたときのペナルティはとても大きいということ。

 

 

 

企業の社会的責任

eco企業が自然環境や人権問題などに関心を払すべきこと、また、コンプライアンスを遵守しなければならないことは、最近ではかなり一般化してきました。特に、企業が大きくなり社会への影響が大きくなればなるほど、一般市民からの目も厳しくなります。企業の社会的責任が問われる場面で、必ずしも明確な正解が出せるわけではありません。その企業が持つ価値観によって判断しなければならないことになります。例えば、中東のある国に進出した企業の担当者が、現地の役人に賄賂を要求された。賄賂を提供するという違法行為は、コンプライアンスの観点から否定されなければなりません。しかし、その役人が検問等の役人で、武器も所持していたとしたらどうでしょう?その企業担当者は、同行者の生命の危険も顧みずに賄賂を拒否することができるだろうか?

 

以上、私が学んだMBAの極々簡単なご紹介でした。